動画制作の段取りは、工程表ではなく「決める順番」である

動画制作の段取りを調べると、企画、撮影、編集、納品という四つの箱を矢印でつないだ図がいくらでも出てくる。図そのものは正しい。ただ、私たちが受けてきた国内の企業・公的機関の案件で、予定どおりに進まなかったものを振り返ると、原因が工程の順番だったことはほとんどない。止まるのは、ある工程で「誰が、いつまでに、何を決めるか」が決まっていなかったときだ。構成案は出ているのに決裁者がまだ見ていない。撮影日は決まったのに出演する社員の予定が固まっていない。編集の試写で、初めて部長から「全体の方向が違う」と言われる。

この記事では、動画制作の段取りを六つの工程に分け、それぞれで制作会社がやること、発注側が決めておくこと、そして止まりやすい場所を書く。社内で初めて映像を発注する担当者の方が、自分の会社の決裁の流れに当てはめて使える形にしたつもりである。

全体の流れ — 六つの工程と、それぞれの決めごと

  1. 企画・ヒアリング — 目的、見る人、使う場所を決める
  2. 見積・発注 — 範囲と修正の回数を文字にする
  3. 準備(プリプロダクション) — 構成・台本、場所、出演者、撮影日を固める
  4. 撮影 — 当日は「確認」の日にする
  5. 編集・試写・修正 — 直す順番を守る
  6. 納品 — 形式と権利を先に決めておく

工程ごとに「決めごと」が一つずつある。これが前の工程で決まっていないと、次の工程は始められないか、始めても戻ることになる。

工程1 企画・ヒアリング — 目的と見る人、そして「使う場所」

最初の打ち合わせで制作会社が聞くのは、何を作りたいかよりも、その映像を誰がどこで見るかである。展示会のブースで音を出さずに流す映像と、採用サイトで学生が一人で見る映像と、営業担当者が商談の冒頭で見せる映像では、尺も、テロップの量も、画の作り方も変わる。同じ「会社紹介」という言葉で、まったく別の映像になる。

制作会社がやること。 目的と見る人を聞き取り、使う場所から尺と形式の当たりをつけ、過去の似た案件を踏まえて「この内容ならこういう作りになる」という方向性を示す。この段階で、撮影が必要な場所と人、必要な日数の見通しも出す。

発注側が決めておくこと。 映像の目的、見る人、使う場面、公開したい時期。そしてもう一つ、社内で最終的に「これでいい」と言う人が誰かである。この人が企画の段階で一度も映像の話を聞いていない案件は、ほぼ例外なく編集の試写で止まる。

工程2 見積・発注 — 範囲と修正回数を文字にする

見積書は金額を伝える書類である前に、「何をやって何をやらないか」を決める書類だ。撮影日数と編集費だけが並んだ見積と、構成案の作成、下見、撮影許可の申請、出演者への説明、修正の回数、納品する形式まで行として書かれた見積では、同じ金額でも中身が違う。安い見積を選んだつもりが、書かれていなかった仕事を自分でやることになった、という話は珍しくない。

制作会社がやること。 工程1で聞いた内容をもとに、含まれる作業と含まれない作業、修正の回数、納品物の形式と本数、スケジュールの前提を見積に書く。見積には有効期限があり、私たちの場合は発行日から三か月としている。

発注側が決めておくこと。 発注の意思表示をどの形で出すか(発注書か、メールでの承諾か)と、支払いの条件。国内の取引では後払いが一般的で、私たちも国内案件は月末締め翌月末払いを基本にしている。ただし撮影クルーや機材、ナレーターといった外注の費用は撮影日より前に確定するため、新規のお取引や規模の大きい案件では一部を先にお願いすることがある。これは見積の段階で伝えておくべきことで、撮影の直前に出てくる話ではない。

工程3 準備 — 撮影日より前に、ほとんどの勝負がついている

発注が決まってから撮影日までの期間を、私たちは制作の中で最も重い工程として扱っている。ここで作るのは、構成案(または台本)、撮影場所と許可、出演者の確定、当日の行程表(香盤表)、クルーと機材の手配である。

制作会社がやること。 構成案を書き、発注側の承認を取る。撮影場所の下見をして、光の向き、音の環境、電源、機材を運ぶ動線を確かめる。施設や自治体への撮影許可を申請する。出演する社員に、当日何を話すか、どれくらい時間がかかるかを事前に伝える。これらを行程表に落とし、撮影日の一週間前には全員が同じ紙を見ている状態にする。

発注側が決めておくこと。 構成案への承認を、決裁者を含めて期日までに出すこと。出演者の予定を確定させ、撮影場所の社内承認(工場や店舗なら稼働への影響、オフィスなら映り込んでよい範囲)を取ること。衣装や小道具、画面に出してはいけない情報(未発表の製品、取引先のロゴ、社外秘の掲示物)を事前に伝えること。

止まりやすい場所。 構成案の承認が担当者の手元で止まり、決裁者に届くのが撮影日の数日前になる型である。そこで差し戻しが入ると、許可の取り直し、クルーの再手配、出演者の予定の組み直しが一度に起きる。構成案を決裁者に見せる日を、撮影日からではなく、許可申請の締め切りから逆算して決めておくと、この型はほぼ防げる。

工程4 撮影 — 当日は「確認」の日にする

準備が整っていれば、撮影当日に発注側がすることは多くない。進行は制作会社が仕切り、出演者への指示も、施設との調整も、予定が狂ったときの判断も制作側の仕事である。

制作会社がやること。 行程表どおりに撮影を進め、撮ったものをその場でモニターで見せ、必要なら撮り直す。天候や施設の都合で予定が変わったとき、何を優先して何を落とすかを判断し、発注側に選択肢として示す。

発注側が決めておくこと。 当日、その場で「これでよい」と言える人が一人いること。担当者が会議で席を外している間に判断が必要になった、というのは現場で実際に起きる。その人が決裁者本人である必要はないが、決裁者から任されている必要はある。

撮影は撮り直しの利きにくい工程だ。準備で決めたことを確認する日にできていれば、当日に新しい判断はほとんど要らない。

工程5 編集・試写・修正 — 直す順番を守る

薄暗い編集室でモニターを前に試写を行う編集者と担当者の後ろ姿
試写では全体の方向から先に確認し、細部の修正はその後に回す。

編集は一回の作業ではなく、段階がある。まず構成どおりに素材を並べ、尺と流れを確かめる段階(仮編集)。次に、色、音、テロップ、ナレーション、音楽を整えて仕上げる段階(本編集)。修正の回数より大事なのは、この順番を逆に戻らないことである。

制作会社がやること。 仮編集の段階で試写用の映像を出し、「構成と流れ」について意見をもらう。承認が出てから本編集に入り、仕上がった映像で「表現の細部」について意見をもらう。修正の範囲と回数は見積に書いたとおりに扱い、範囲を超える変更は費用と日数への影響を先に伝える。

発注側が決めておくこと。 社内試写で出た意見を一人にまとめて返すこと。複数の部署から別々に、互いに矛盾する修正が届くと、制作会社はどれを採るか判断できない。そしてもう一つ、仮編集の段階で決裁者に必ず見てもらうこと。本編集が終わってから構成の変更が入ると、色や音の作業をやり直すことになり、費用と日数が一段増える。

工程6 納品 — 形式と権利を先に決めておく

納品で決めるべきことは、工程2の見積の段階でほぼ決まっているはずである。確認するのは、納品する形式(解像度、ファイル形式)、本数(尺違いの版、字幕版、音なし版)、公開の予定、そして使用の範囲だ。

映像の著作権と使用権の扱いは制作会社によって違う。私たちは納品物の著作権を当社に置き、クライアントには取り決めた範囲での使用権を許諾する形を基本にしている。展示会用に作った映像をウェブ広告に転用したい、といった二次利用は別途相談になる。撮影した素材そのものの扱いも同じで、納品物とは別に事前に取り決めておく。これらは納品日に初めて出てくる話ではなく、見積と同じ紙に書かれているべきものである。

納品物を確認し、問題がなければ検収となり、請求書を発行する。ここまでが一つの案件の流れだ。

遅れる案件に共通する三つのこと

六つの工程を振り返ると、遅れる案件には同じ型がある。

  • 決裁者が最後に現れる。 企画でも仮編集でも顔を出さず、本編集の試写で初めて意見を言う。
  • 使う場所が途中で増える。 採用サイト用として作っていた映像を、途中から展示会でも使いたいとなり、尺とテロップの前提が変わる。
  • 修正の段階が逆行する。 仕上げまで終わった映像に、構成の変更が入る。

どれも制作会社の技術で防げるものではない。段取りの最初に、決裁者が見る日と、使う場所の一覧を決めておくことでしか防げない。だから私たちは、動画制作の段取りを工程表ではなく「決める順番の設計」だと考えている。

大笑映像制作の段取り

私たちは2012年の創業以来、海外の制作チームを日本で受け入れ、撮影場所の確保から許可、クルーの手配、当日の進行までを引き受ける仕事を続けてきた。言葉の通じない相手と撮影日を守るには、段取りを曖昧にしておく余地がない。何をいつ誰が決めるかを紙にし、全員が同じ紙を見て動く。その進め方を、国内の企業・公的機関の映像にそのまま持ち込んでいるのが大笑映像制作である。

企画から見積、構成案、下見と許可、撮影、編集、納品までを一つの窓口で引き受ける。必要な工程だけを担うこともできる。関西一円を中心に、必要に応じて全国に対応している。映画の作り方で培った画作りをコーポレート映像に持ち込みつつ、段取りは徹底して実務的に組む。これが私たちの提供価値だ。

初めて動画制作を発注する方へ

社内で映像の発注を初めて担当することになり、何から決めればよいか分からない。あるいは、過去の案件で編集の終盤に差し戻しが起きて苦い思いをした。そうした段階でご相談いただければ、御社の決裁の流れに合わせて、どの工程で誰に何を決めてもらうかを一枚の段取り表にしてお渡しする。見積を取る前に、段取りを一緒に組むところから始められる。

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