同じ依頼のはずが、見積もりは倍違う

施設をまるごと3Dデータにしたい。敷地全体の正確な空撮地図がほしい。そんな要望でドローン業者に見積もりを取ると、会社によって金額が数倍違うことがある。どこかが暴利で、どこかが良心的なのだろうか。多くの場合、そうではない。各社が「別の仕事」を想像して見積もっているのだ。ドローン写真測量は、仕様の読み方ひとつで作業量がまるごと変わる仕事だからである。

今年、私たちのもとにドローンサービスのマーケットプレイス経由で、大型の打診が届いた。茨城・千葉に点在するゴルフ場5コースを計測・撮影し、コースをまるごと歩き回れるバーチャル空間として再構築したい、という依頼だ。結論から言えば、この案件を私たちは受けなかった。だが、その検討の過程は「ドローンで測る・撮る」を発注する側にとって、仕様と費用の関係を知る格好の教材になる。

依頼書の中には、実は三つの仕事が積み重なっていた

ロケ現場のモニター前で空撮データを確認する日本の撮影クルーの後ろ姿
一枚の依頼書に積み重なった三層の仕事を、現場で分解していく。

紙の上では一つの依頼だが、仕様を分解すると三層になっていた。

一つ目は、写真測量そのもの。1コースおよそ140ヘクタールを、地上解像度2.5cm/ピクセルで格子状に撮影する。これは「上空から綺麗な写真を撮る」話ではない。樹木の高さまで実寸で参照できる3Dメッシュに写真を焼き付けるための密度で、成果物にはオルソ画像(GeoTIFF)、点群データ(LAS)、テクスチャ付き高解像度モデルが並ぶ。

二つ目は、地上撮影。クラブハウスの全方位、バンカーの縁や砂面、橋、池、植栽。空撮だけでは必ず残る死角を、近接データで埋める工程だ。

三つ目は、動画。全18ホールのフライオーバー、各グリーン・ティーの周回撮影、高所からの360度撮影——1コースあたり約90本の未編集クリップ。編集はしないが、後工程で使える一貫性は要る。

この三層は、それぞれ機材も飛行計画も現地拘束時間も別物だ。140ヘクタールを2.5cmの密度で網羅する撮影格子は、それだけで丸一日かかる。90本の動画はまた別の一日。これを「1回の訪問でまとめて」と圧縮すると、欠測が出る。そして欠測は、もう一度現地へ行かない限り埋まらない。見積もりが会社ごとに違う最大の理由はここにある。この積層を分解して積んだ見積もりと、「ドローン1日いくら」で出した見積もりは、同じ金額になりようがない。

発注側が見落としやすい、飛ぶ前の工程

ドローン測量前、草地に対空標識を設置する手元とクルーのシルエット
見落とされがちな「飛ぶ前」の地上作業が、精度と費用を左右する。

国内の発注担当者が見積もりを比べるとき、抜け落ちやすいのが飛行前の段取りだ。広域のドローン飛行には、飛行許可・承認の手続きと、管理された土地の上を飛ぶための調整が要る。ローターが一度も回らないうちに消えていく時間が、確実に存在する。この前工程を見積もりに正直に載せている会社と、載せていない会社では、金額は当然変わる。安い方を選んだ結果、許可の手配が発注者側に返ってくるなら、それは安くない。

天候の考え方も逆説的だ。3Dモデルに使う測量撮影は、快晴よりも曇天が向いている。強い影と反射は、写真から立体を復元する処理を混乱させるからだ。つまり「晴れたら決行」ではなく「適した窓を待つ」柔軟な日程が、データの質に直結する。桜の時期に合わせたい、といった要望が加われば、日程の難度はさらに上がる。ノートパソコンの画面では綺麗に見えるデータと、実際にモデルとして組み上がるデータの差は、こうした地味な条件管理から生まれる。

受けなかった理由 — 仕様と業者の「合う・合わない」

この案件のやり取りで一番価値があったのは、要件が明確になったことだった。対話を重ねるうちに、依頼主が本当に必要としていたのは、精密な測量級データではなく「標準品質のデータを大量に、一貫して」だと分かってきた。動画に作品的な画作りは要らず、写真はあえて普通のスマートフォン撮影で、とにかく量がほしい。

それは全く正当なプロジェクトだ。ただ、高密度の写真測量に組んだ体制でやる仕事ではなく、量に最適化した業者に任せるべき仕事だった。私たちはそのことを率直に伝えた。仕様に合わない業者に発注すると、納品の日に失望が待っている。合う相手へ案内することは、たとえその相手が自分たちでなくても、双方を守る判断だと考えている。

逆に、正確なオルソ画像、実寸の点群、実形状を参照できるモデル——本当に測量級の成果が要る案件は、まさに私たちの設備と手順が組まれている領域だ。私たちはレースゲーム『RIDE 5』のサーキット高精度計測で、実際にドライバーが走るコースを現実と一致させる仕事を担った経験がある。空撮・地上・360度の三層で組む構造は、ゴルフ場でも工場でも同じである。

ドローン写真測量・空撮の発注をご検討の方へ

大笑映像制作は、ドローン空撮を含む映像制作を手がける大阪拠点のブランドです。敷地の3D化、広域の空撮記録、施設のプロモーション空撮まで、飛行許可の手配から成果物の設計までを一体でお受けしています。

お問い合わせの際は「どんな映像がほしいか」より先に、「そのデータを何に使うか」をお聞かせください。用途が決まれば、必要な解像度も、成果物の形式も、現地日数も逆算できます。仕様に対して過剰でも過少でもない見積もりは、そこからしか作れません。

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