「台本は誰が書いたんですか」

映像制作会社を映画品質で選ぼうとするとき、多くの人は機材や作例の画の美しさを見比べる。だが私たちの経験では、仕上がりを最も正直に予告するのは脚本の工程だ。昨年、ある公的機関向けの研修用eラーニング動画を納品したとき、先方の確認担当者から戻ってきたコメントにこんな一文があった。「内容も構成もとてもいいですね。台本は誰が書いたんですか」。字幕の一字違いの修正指示と一緒に届いた、何気ない一行である。

研修動画は、映像の世界ではおよそ華のないジャンルだ。講師が話し、資料が映り、ナレーションが流れる。派手な画作りの出番はない。それでも「構成がいい」と言われる仕上がりと、資料を読み上げただけの仕上がりの差は、見た人には一目で分かる。その差を生んだのは撮影機材でも編集ソフトでもなく、撮影の前に書かれた一本の台本だった。

映画品質とは、シネマカメラの型番でも色の深みでもない。撮る前に、何を見せて何を見せないかがすべて決まっている状態のことだ。それを決める工程が脚本であり、制作会社の実力はこの工程の扱い方に表れる。

企業映像の品質は、撮影日の前に決まっている

台本に書き込む手と金色のデスクランプ、背景に機材
仕上がりの差を生むのは、撮影の前に整えられた設計にある。

私たちは2012年の創業以来、映画制作で培った画作りと構成の考え方を、企業や公的機関の映像に持ち込むことを仕事にしてきた。両方の現場を行き来して痛感するのは、決定的に違うのは予算や機材ではなく「撮影日を迎えたとき、どこまで決まっているか」だという点だ。

映画は撮影初日の時点で、誰が、どこで、何を言い、カメラがそれをどう見るかが紙の上にある。現場の判断は設計を守るための判断であって、設計そのものを現場で考えることはない。一方、企業映像でしばしば起きるのはその逆だ。「とりあえずインタビューと会社の様子を撮って、編集でまとめてください」。撮ってから考える。これが、企業映像が「なんとなく綺麗だが何が言いたいのか分からないもの」になる最大の理由だと私たちは考えている。

撮影とは選択肢を捨てる作業だ。撮った瞬間に、撮らなかった画は存在しなくなる。冒頭の研修動画も、ナレーション原稿を最初から書き起こし、資料のどのページをどの言葉に重ねるかを台本の段階で固めていた。編集で「なんとかする」余地を、意図的に残さなかったのである。

台本がコーポレート映像で果たす三つの役割

一つ目は、目的から逆算した構成である。誰が、どんな状況で見て、見終わった後に何をしてほしいのか。研修動画なら受講者が現場で正しく動けること、会社紹介なら次の商談に進みたくなること。尺は「何分にしますか」で決まるのではなく、伝えるべきことに必要な時間として台本から導かれる。

二つ目は、画で語る設計だ。映画の脚本は説明台詞を最も嫌う。企業映像も同じで、ナレーションで全部説明する映像は記憶に残らない。工場なら、精度の高さを言葉で言う前に、それが目で分かるカットを一つ置く。台本で「ここは言わずに見せる」と決めておかないと、現場でその一カットを撮り忘れ、編集でナレーションを足して補うことになる。

三つ目は、音の設計である。冒頭の研修動画ではAIナレーションでより自然な言い回しを求める要望があり、収録前の台本執筆を独立した工程として見積もりに立てた。機械音声でも人の声でも、原稿の語順と句読点ひとつで聞き取りやすさは大きく変わる。字幕に出す専門用語の表記まで台本で確定しておけば、確認段階で戻る箇所も減る。

映像制作会社を脚本の工程で見極める、映画品質のための五つの質問

オフィスをロケハンするクルーのシルエットと窓辺の金色の光
何を見せて何を見せないか——脚本の工程が現場の判断を導く。

第一に、見積書に「企画・構成・台本」の行が独立して立っているか。私たちは企画やシナリオにかかる時間を、撮影や編集とは別の工数として積んでいる。撮影と編集だけの見積書は、台本を書く時間をどこにも見込んでいないか、撮影担当者が現場で兼ねる前提だ。どちらにせよ、撮ってから考えることになる。

第二に、撮影前に台本が文書で提出され、承認する工程があるか。口頭で「だいたいこんな感じで」と進む会社と、ナレーション原稿と構成表を撮影日前に渡してくる会社では、当日に起きることがまるで違う。映像づくりで最も安く直せるのはこの段階だ。

第三に、こちらに絵コンテや構成案がなくても引き受けるか。実際、私たちに届く依頼の多くは「特に決まった絵コンテはありません。大枠としてインタビューと現場の様子を」というところから始まる。それでよい。用意できないから制作会社に頼むのであって、大枠を台本に起こすのは制作会社の責任だ。確かめるべきは、その工程を相手が自分の仕事として引き受けるかどうかである。

第四に、台本の修正に対する態度だ。台本段階の修正は紙の上で済む。撮影後の修正は再撮影か、素材の範囲内での妥協になる。「台本は目安なので現場で調整しましょう」と言う会社は、修正を重い方へ先送りしている。

第五に、台本を書く人間と、撮る人間、編集する人間が同じ視点を持っているか。映画では脚本と現場は分業が普通だが、コーポレート映像の規模では、書いた人間が撮影に立ち会い、編集まで見通せることが強みになる。台本の一行が現場でどのカットになり、編集でどう繋がるかを一人の頭の中で往復できると、台本の精度は上がり、現場の迷いは減る。私たちが台本づくりを外に出さないのはそのためだ。

依頼する側にしか用意できないもの

脚本を書くのは制作会社の仕事だが、脚本の原料は依頼側にしかない。打ち合わせの前に整理しておいていただきたいのは四点。誰に見せるのか。視聴後に何をしてほしいのか。絶対に言ってはいけないこと、映してはいけないものは何か。そして専門用語の正しい表記は何か。冒頭の研修動画で戻ってきた修正は、字幕の専門用語の一字違いだった。制作会社は文章と映像の専門家であって、その業界の専門家ではない。用語の正誤は依頼側の目でしか担保できない。逆に言えば、この四点さえ揃えば絵コンテも構成案もなくてよい。そこから先を台本に変えるのが、私たちの仕事である。

脚本から一緒に考える映像制作を

大笑映像制作は、企業プロモーション映像、ブランドドキュメンタリー、製品・サービス紹介動画、採用映像、研修映像を、企画・脚本の段階から撮影、編集、納品まで一貫して手がけている。決まっているのが「誰に、何を伝えたいか」だけでも構わない。まずその大枠をお聞かせいただければ、台本として形にするところからご一緒する。映像制作会社を映画品質で選びたい方は、見積書の「企画・構成」の行を、ぜひ私たちのものと見比べていただきたい。

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